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乳がん検診について
わが国の乳がんの罹患率及び死亡率は、先進国の中では低いようですが、近年急速に増加してきています。今後さらに増えることが予想され、乳がんの予防対策の確立は重要な課題となっています。現在、その予防対策のひとつとして、がん検診は重要な位置を占めています。
 がん検診は、異常のあるものを要精検とし、検査を行ってがんを早期に発見し、さらに治療を行い、がんによる死亡率を減少させることを目的とするものであります。以前よりの胃がん、子宮がんの検診に加えて、乳がん検診も老人保健法の対象となり現在に至っています。
 私がかかわった大阪大学微研外科(現大阪大学医学部腫瘍外科)での約20年間の乳がん検診の成績をもとに、乳がん検診の現状と今後の課題について話をしたいと思います。

 1.検診の方式と方法
わが国の乳がんの罹患率及び死亡率は、先進国の中では低いようですが、近年急速に増加してきています。今後さらに増えることが予想され、乳がんの予防対策の確立は重要な課題となっています。現在、その予防対策のひとつとして、がん検診は重要な位置を占めています。
 がん検診は、異常のあるものを要精検とし、検査を行ってがんを早期に発見し、さらに治療を行い、がんによる死亡率を減少させることを目的とするものであります。以前よりの胃がん、子宮がんの検診に加えて、乳がん検診も老人保健法の対象となり現在に至っています。
 私がかかわった大阪大学微研外科(現大阪大学医学部腫瘍外科)での約20年間の乳がん検診の成績をもとに、乳がん検診の現状と今後の課題について話をしたいと思います。

 2.検診の結果
図1
(図1)
20年間の乳がん検診総受診者数は、11万8165人で、その内なんらかの異常を認めた要精検者数は、4459人、そして発見されたがん患者数は、158人でした。すなわち、受診者1000人つき1〜2人の発見率となります。これは、他施設の視触診による乳がん発見率とほぼ同率で、視・触診法による限界かもしれません。
乳がん検診で発見されたがん患者(集検例)と、なんらかの異常を自覚し直接病院を訪れる外来患者から発見されたがん患者(外来例)とを比較してみますと、早期のがんは集検例に多く、進行したがんは外来例に多いことがわかりました。しかし、乳がん検診を受診し乳がんの宣告をうけた人の中には、本来ならば乳がん検診を受けるのではなく病院に受診すべきである自覚症状を有する人が多く含まれていることは確かです。これらの人達が、もし本来の姿である病院の外来に受診していたならば、乳がん検診で発見される早期乳がんはもっと増えるはずです。
 さらに乳がん手術時に調べたリンパ節転移の様子をみてみますと、予想されたように、集検例にリンパ節転移の無い者が多いという結果が得られました。リンパ節転移をみても集検例に早期のがんが多いことがわかます
図2
(図2)
次に、乳がん手術後の5年生存率を乳がんの病期分類別にみてみますと、腫瘤径(しこりの大きさ)2cm以下で腋窩に転移リンパ節を触れない StageT(第1期)の早期がんでは、約95%と非常に予後がよく、やや進んだ StageU(第2期)になりますと約85%と低下します。これからみても乳がん検診によって、より早期にがんを発見することが非常に大切であることがわかります。

今までは、乳がん検診の現状を話してきましたが、これからは老人保健法による乳がん検診(一次検診)の問題点について述べたいと思います。

 3.乳がん検診の今後の問題点
(1) 現在の検診方法は、あくまでも視・触診法が主体であるために、乳がんに関する知識が豊富な専門医を確保することが不可欠であります。
(2) 視・触診法による乳がん検診では、医師個人の技術差や主観が入るため、要精検者を決定する際に個人差が生じることが考えられます。この個人差をなくすためにレントゲン検査(乳房撮影)や超音波を併用する検診が近い将来導入されることになっています。
(3) 効率よく乳がん検診を行うためには、乳がん発見率が、初回受診者や高齢者に高く、繰り返し受診者や若年者で低いということを考慮しますと、毎年同じ人が検診を受ける繰り返し受診を減らし、初めて検診を受ける人を優先するなどの方法をとらなければならないのかもしれません。その上、乳がん検診受診者の年齢のことについていいますと、乳がんの好発年齢である40〜50才以上の人に検診を受けてもらいたいことになります。
(4) 乳がんは、自分自身で発見できる唯一のがんであるとよくいわれます。自分で乳がんを発見するためには、自己検診が大切です。
乳がん検診の時に指導された自己検診を行っている人は非常に少ないようです。乳がん検診を行う医師は、もっと自己検診の重要性を説明しなければなりませんし、受診者自身も、乳がん検診を受けた後でも、 「私は、乳がんではなかった。」 と安心せずに月に一度は自己検診を行ってほしいと思います。

 4.おわりに
20年間の結果をもとに、乳がん検診の現状とその問題点を述べてきましたが、年1回の乳がん検診と月1回の自己検診とで、乳がんをより早期に発見し乳がんによる死亡率が、少しでも減少することを願って終わりとします。



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